奇妙な夢
先日、奇妙な夢を見た。僕は夢を見ても大抵起きて覚えているのは漠然としたプロットのみで、内容も映像も忘れてしまう。しかし今回は非常に珍しいことに(本当に稀有なことである)内容も映像も、それどころか場所(外苑の並木道)までもはっきりと覚えていた。季節は秋で枯葉の季節。20年も会っていない女友達が、どうやら僕と待ち合わせをしていたらしく、僕の方に駆け寄ってくる。目の前までくると、ふっ、と夢のように(いや夢なのだが)光の粒になって消えてしまう。確かに彼女と秋に外苑に行ったことがある。
その女性のことは、もちろん忘れてはいなかったが、なにぶん20年来会っていない。その顔などのディテールは、すっかり忘れていたのが、非常にはっきりと、夢のなかで、そう、そういう顔だったと思うほど明確だった。20年前のままだった。
いったい何だったのか不思議で、ひょっとして彼女の身に何か起きたのかとは思ったものの調べる術もない。もともと、僕→友人A♂→その友人B♀→夢の女友達というつながりだったのだが、友人Bも20年近く前に(確か急性白血病で)他界しており、友人Aに訊いても詮無い、仮に何か起きていたとしたら、僕に会いに来てくれたのは有り難いことだと思うことにした。
と、その友人Aから電話を貰い、その電話自体は彼がフランスでパソコンを盗まれたので次に何を買おうかという相談だったのだけれども、その夢のことを話してみたら、なんと彼も最近彼女の夢を、しかも僕と一緒にいるところを見て、不思議に思っていたのだという。彼だって20年以上彼女には会っていない。この偶然にやや戦慄しつつ、しかし、やはり手繰る糸もない。その糸を探すことも不可能ではなかろうが、今更「夢を見たので心配になった」と言って探し出そうとするとして、それはそれで小説っぽくって良いかもしれないけれども、現実には僕がただの気持ちの悪い人になってしまう。ただ彼女が元気でいることを祈りつつ電話を切った。
それでも、いまだ釈然としない気持ちを抱えたまま、この数日を過している。心当りの方はご連絡ください。