『民主化のパラドックス』読了

その軽快なフットワーク、軽妙な語り口、筆の速さで尊敬している本名純氏の『民主化のパラドックス』をようやく読了した。

正直、もっと早く読むべきだった。本書に書かれている事柄のいくつかは、既に本名さん本人から、あるいは他の情報源から知っているものではあったが、それらが実に明快に提示されている。そして、とりわけインドネシアにおけるレフォルマシ(改革)以降の政治が、見事に自分の研究で描こうとしているものとリンクしている。

地域研究をやっている人間としては、次の言葉に早く自分で応えなければならないだろう。「その国の政治の日常に疎い理論家や実務家の視野にはおのずと限界がある。特に民主化の予期せぬインパクトは、彼らの目から一番遠いところで起きている。その重要性を発信できるのは、地域に密着して調査を進めてきた地域研究者であり、今以上に彼らの役割が期待されているときはない。」(18頁)

インドネシアをフィールドとしている人だけではなく、政治学や開発学を専門とする人たち、あるいは民主化に興味がある人は是非読むべき一冊である。