今日頂いた本

FaceBookにも書き込んだが、ウマル・カヤムの『パラ・プリヤイ』が翻訳され、一足先に送って頂いた。

  • ウマル・カヤム著(後藤乾一、姫本由美子、工藤尚子訳)『サストロダルソノ家の人々〜ジャワ人家族三代の物語』段々社、2013年。[ISBN: 978-4-434-17216-8]Para Priyayi

原書は、Umar Kayam. Para priyayi: Sebuah novel, Pustaka Utama Grafiti, 1992.  [ISBN: 9794441864] であるが、これが翻訳されるとは嬉しい驚きである。舞台となるジャワの世界と、ウマル・カヤムの用いる言語の故である。オランダ植民地時代に貴族ではない平民から「政府(下級)官吏=プリヤイ (priyayi)」になったサストロダルソノ一家の、独立後1960年代にいたる年代記であるが、ジャワの封建的な社会を前提とした小説を、日本語読者の理解できるように言葉を移すことは困難を極めたであろう。そして、その世界を描く言語は、敬語体系が複雑(怪奇)で、敬語レベルによって語彙までが変化してしまうジャワ語そのものが会話をはじめ至るところで用いられるのみならず、ウマル・カヤムの言語自体が「インドネシア語の皮をかぶったジャワ語」とでも言うべきもので、それが彼一流の味なのではあるけれども、これまた翻訳は想像もできないくらい茨の道であったろう。

こうした問題を問題を訳者たちがどのように乗り越えたか、あるいは回避したかも興味深いのだが、何よりもこの小説自体のもつ世界を是非日本の読者にも楽しんでいただきたい。ジャワやインドネシアについて良く知らない読者にも十分楽しんでいただける。(だって、マルケスの『百年の孤独』の読者がどれだけコロンビアについて知っているというのだろう?)