IT, 警察, 図書館

コンピューター技術、情報ネットワーク技術の発達で、数十年前に比して図書館の利用は格段に容易になった。Webcat plus で大学図書館の蔵書を横断的に検索できたりもする。(ただし、このネットワークに参加している大学だけ。早稲田などは参加してない。)どこの図書館に求めている書籍があるのか、予め確認できるので、無駄足というものがない。図書館に行ってみては、カードを繰り、無駄足だったことに呆然とするという経験をした、僕は最後の世代に属するのではないだろうか。

さて、本題はそこではない。愛知県岡崎市立図書館のウェブサイトにアクセスし、新着図書の情報などを収集するプログラムを書いて実行させた男性を、愛知県警は処理能力を超える要求を故意に送りつけた(「サイバー攻撃」)と判断し、業務妨害容疑で男性を逮捕した。20日間拘留ののち、名古屋地検岡崎支部は6月、「業務妨害の強い意図は認められない」として起訴猶予処分とした。(朝日新聞

これが、例えば、韓国ネチズン(なにそれ?)による2ch攻撃のような、すさまじい「攻撃」だったとすれば起訴猶予で良かったね、ということになるのだが、どうもそうではないらしい。

結論から言えば、男性は「サイバー攻撃」していないし、無実と見做すべきである。にも関わらず、起訴猶予となり犯罪歴が付いたのは、愛知県警の無知、岡崎市立図書館の無為無策、図書館にソフトウェアを納入した三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)社の無能が原因である。(ちなみに三菱電機インフォメーションシステムズのサイトに、三菱図書館システム MELIL/CS 導入事例:岡崎市立中央図書館がある。そのうち消されるかも。)

まず、男性が作成し実行させたプログラムは、「サイバー攻撃」を目的としたものではなかったし(個人的な情報収集)、一般的な観点からは「サイバー攻撃」と見做されるほどのアクセスをしていたわけでもない。10分間に1000アクセス程なのだから、まぁ100人が10分間に10回ずつアクセスするくらいの話だ。しかし、三菱電機インフォメーションシステムズの納入した三菱図書館システムMELIL/CSというシステムは「10分間にアクセスが約1千件を超えると、ホームページの閲覧ができなくなり、大量アクセスを受けたように見えた」らしい。このソフトウェアを朝日新聞が独自に入手し(これは法的に大丈夫なのだろうか?)、専門家に調査を依頼したところ、三菱電機インフォメーションシステムズのシステムに不具合があることが分かったという。

この事件後7月、三菱電機インフォメーションシステムズは電算処理を毎回切るように岡崎のソフトを改修。全国約30の図書館で順次作業を進めているそうだ。

こうなると、三菱電機インフォメーションシステムズも不具合を(暗に)認めているように読めるのだが、でも男性は20日も拘留されたうえ、犯罪歴がついちゃったのだ。

愛知県警による男性逮捕の判断基準は分からないが、「図書館の業務に支障が出たことは事実で、捜査に問題はない」とするのであれば、「図書館業務の支障」の最大の原因がどこにあるのか調査しなければならなかったし、それを公表せねばならぬだろう。また図書館も「様々なプログラムによるアクセスにも対応するよう改善を進めたい」とか言っている場合ではなくて(そもそも普通のブラウザによる検索でも100人×10アクセス/10分でアクセス不能になるではないか!)、三菱電機インフォメーションシステムズもこっそりとシステムを改修している場合ではなくて、愛知県警による逮捕、検察による起訴猶予処分自体が根拠のない不当なものであることを検察に働きかけるべきではないか、と思うわけである。

しかし、この男性、警察での経験が余程身に堪えたのか、「逮捕されたことについて不満はございません。大変なご迷惑をお掛けしました事、深くお詫び申し上げます。」と言っている。

愛知県には縁がないわけではないので、今後愛知県にいるときには言動に十分に注意を払わねばならぬと思った次第。